八ツ場ダムで沈む天然記念物．吾妻渓谷川原湯付近に露出した輝石安山岩岩脈で，1934年(昭和9年)に国指定の天然記念物に指定されました．矢印部分が臥龍岩と考えられます．昇竜岩は臥龍岩の東側(右手奥側)の露頭になります．

　貯水が始まる前に撮影したいと考えていたのですが，2017年春時点で既に水没予定地域は八ツ場ダムに関連した工事によって立ち入り禁止になっていました．旧川原湯温泉の施設は，水没しない高台に移転が終わっています．岩脈は遠望することしかできません．

　臥龍岩および昇龍岩をつくる岩脈は輝石安山岩とされています．同じ吾妻渓谷の安山岩岩脈からは，190万年前のK-Ar年代が得られている(中村ほか，2016)ので，天然記念物の岩脈もほぼ同じ時代のものと考えられます．

　遠望すると昇龍岩の部分(右下の矢印)から，北側の尾根(中央の矢印)とピーク(左上の矢印)まで岩脈が続いているようです．もしそうだとすれば，貯水されると川床部分は水没してしまうものの，天然記念物の全てが損なわれるということではないかもしれません．将来的に，保全と見学ルートができることが望まれます．