三波石峡は，神流湖をつくる下久保ダム下流の神流川がつくる渓谷です．1957年(昭和32年)に国の天然記念物に指定されました．

　三波石峡の石には，それぞれ名前がつけられていて，対応させながら散策することになります．流域の岩石は古くから庭石として珍重されており，鬼石町周辺には石材店がたくさんあります．

　岩石は，三波川変成岩類中の緑色片岩です．この地域の北東部でも厚い緑色片岩層に伴う銅を採掘した記録があり，緑色片岩の原岩は，中央海嶺で噴出した玄武岩溶岩であると考えています．
　岩石中の白い鉱物脈は，玄武岩が変成作用を受けた際に搾り出されてきた流体から沈殿したもので，石英や方解石からできています．

　この地域の北西部で測定した三波川変成岩類の年代は，海溝に堆積した年代が約9000万年前，これが変成を受けて上昇中の年代が約8000万年前ということが分かっています(Tsutsumi et al., 2009)．

　三波川変成岩(Sanbagawa metamorphic rocks)は，世界的に見てももっとも詳しく調査研究されている高圧型変成岩で，この分野の研究者で知らない人はいません．美しい景色だけでなく，学術的にも貴重な場所になっています．