岩神の飛石は，群馬県前橋市の利根川岸にある高さ10mほどの火山岩岩塊です．1938年(昭和13年)に国指定の天然記念物に指定されました．北側の赤城山の斜面の末端にあるため，指定当時は，赤城山由来の岩塊と考えられていたようです．

　飛石は鮮やかな朱色をした火山岩塊です．柵で仕切られていて近づけないのですが，一部には溶岩岩片が高温で溶結したアグルチネートの部分が見られます．このような岩塊は，浅間山の山体崩壊時に放出された土石流が，利根川を流下して堆積した堆積物中に見られます．このため，群馬大学の早川由紀夫教授らは，浅間山由来であろうと推定していました．2015年の群馬県の調査で，化学組成が浅間山のものに一致することが確認されて，この仮説は裏づけられました．
　鬼押し出し溶岩流を噴出させた浅間山の天明噴火の際も，流下した岩屑流が利根川を流れ下りました．火山噴火の影響が広範囲におよぶことを示す，重要な防災資料となる天然記念物です．